共振状態の回路の特性

共振状態の直列回路と並列回路の電流・電圧・インピーダンスの特性について整理します。

共振直列回路

下図に示す共振直列回路において、交流電圧V=100[V]、抵抗R=10[Ω]、コンデンサXL=5[Ω]、コイルXC=5[Ω]とした場合の電圧降下はこのようになります。

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共振直列回路

ここで、電源電圧が100[V]であるにも関わらず、抵抗で降下する電圧が100[V]、コンデンサで降下する電圧が50[V]、コイルで降下する電圧が50[V]となっています。

そのため、電源電圧は100+50+50=200[V]無いとダメなのでは?と思った方がいらっしゃるかもしれません

実は、コンデンサで発生する50[V]とコイルで発生する50[V]が逆位相で打ち消しあうため、回路全体で見る実質的な電圧降下は100[V]となります。

今回はこちらについて整理していきます。

共振回路とは?

そもそも共振回路とは、回路のリアクタンスが零となる回路のことです。

リアクタンスについては下記を参照してください。 robotech.hatenablog.jp

例えば、上で示した回路の場合、交流電圧が下式を満たす周波数f0であるときに共振回路となります。


\begin{aligned}
f0=\frac{1}{2π\sqrt{LC}}  \\
\end{aligned}

ここで、Lはコイルのインダクタンス、Cはコンデンサの静電容量を表します。

インダクタンス

コイルには、そこに流れる電流が多くなると抵抗が大きくなり(電流を小さくしようとする)、少なくなると抵抗が小さくなる(電流を大きくしようとする)特性があります。

インダクタンスとは、この電圧の時間変化に対してどれだけ敏感に誘導起電力(変化と逆向きに発生する電力)が発生するかを表します。 式で表すと以下のようになります。


\begin{aligned}
V=L\frac{Δv}{Δt}  \\
\end{aligned}

V:誘導起電力 \\
L:インダクタンス \\
Δt:時間 \\
Δv:Δt秒間での電流の変化量 \\

静電容量

静電容量とは、コンデンサ内にどの程度の電荷を蓄えられるかを示します。

コンデンサには、そこに流れる電流が多くなると抵抗が大きくなり(電流を小さくしようとする)、少なくなると抵抗が小さくなる(電流を大きくしようとする)特性があります。

これだけ聞くと、コイルと全く同じに聞こえますよね。

しかし、コイルとは抵抗の発生タイミングが異なります。

コイルは電流の流れ始めには全く抵抗が無いのに対し、コンデンサは電流の流れ始めに最も大きな抵抗が発生します。

さらに、コイルとコンデンサの抵抗は逆位相となっており、打ち消しあうという性質を持ちます。

共振並列回路

最後に、共振並列回路についても見てみましょう。 電流値が回路全体で同じであった直列回路に対し、並列回路は各分岐点の電圧が同じになります。 ここで、角分岐路に流れ込む電流の和が10[A]+20[A]+20[A]で、回路全体に流れる10[A]と一致しないことがわかります。 これも、先ほどの共振直列回路と同様にコイルとコンデンサが逆位相で打ち消しあうため、このようになります。

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共振並列回路

まとめ

交流回路の計算で、各素子の電圧・電流の和が一致しない謎について、整理しました。

直列回路では、電流は回路全体を通して同じになり、電圧の値の合計はコイル/コンデンサの逆位相を加味すれば電源電圧と一致します。

並列回路では、電圧は分岐点の始点と終点で同じになり、電流の値の合計は、コイル/コンデンサの逆位相を加味すれば全体の電流と一致します。